2021年式NDロードスター試乗記
Anycaで2021年式のNDロードスターをお借りし、1日ドライブを楽しんで来ました。
とっても楽しい1日でした!お貸し頂いたオーナー様、本当にありがとうございました!
将来購入する候補として検討したかった車で、KPC(キネマティックポジションコントロール)付きという理想的なお車をお借りすることができました。
初めてロードスターに乗っていろいろ感じたことがあったのでちょっと書いてみようと思います。
ただ車の感じ方は人それぞれであり、体感や感想は今まで乗ったことのある車との比較でしか語れないと思うので、「超個人的な感想」だと思って読んでいただければ幸いです。
ではいってみましょ〜!
初オープンカーに乗ってみて
「オープンカーでしか味わえない気持ちよさがある」と巷では言われているので、「いつかは絶対にオープンカーに乗ってみたい!」と思ってました。
恥ずかしがり屋の自分としては「オープンなんて周りから丸見えだし、物珍しくて目立つし無理!」って思ってたんですけど、そこまで気持ちいいと言われるなら試さずにはいられません。
天気は生憎の雨模様でしたが、お昼過ぎから晴れ間もあり、運良く1時間ほどオープンにすることができました!
そして初めてオープンにして走りだして思ったのは、
「意外と恥ずかしくない」
でした。
なぜそう思ったかと言うと、下の画像を見てもらいたいのですが、
身長158cmの自分から見える景色が、「ほぼクローズドカー変わらない景色」だったからです。
標準的な男性の身長だときっと窓枠の上の青空も見えて、より「オープンカーに乗っている」ことを実感できると思われます。
恥ずかしがり屋の自分にとってはクローズドボディと変わらない景色がすごく安心できました。
オープン状態による体への風の当たり具合ですが、帽子を被っていた事もあってか「頭部にはまったく風を感じませんでした」。
風の巻き込みがちゃんと抑えられているようで帽子が飛ぶ気配も一切なかったです(一応あごひも付きの帽子をかぶっていました)。
対照的に腕や脚へは普通の車で窓を開けている時くらい風を感じました。
もしかするとサイドウィンドウを閉じればその辺りも抑えることが出来たかもしれません。
今回は屋根・サイドウィンドウともにフルオープンの状態しか試さなかったのでなんとも言えません。
山道を走ると鳥のさえずりがダイレクトに聞こえて気持ちよかったです。
しかし「クローズドの車で窓を開けてる状態とあんまり変わらないかも」と思ったのも事実。
んー、自分はオープンカーじゃなくてもいいかなぁ。
自分にとって「ひとりになれる空間」というのも車の好きな要素なので、無理してオープンカーを追い求める必要がないかなと思いました。
それに気づけたのはとっても大きい経験でした!
乗り味について
国産車の中でも「楽しい車」の代表格のロードスター。
今の自家用車が普通のステーションワゴンのスポーティグレードというだけなので、「設計段階から走りを楽しむために作られた車」がどんな乗り味なのかすごくワクワクです。
ハンドリング
まず感じたのはその独特なハンドリングでした。
うまく説明できませんが、ステアリングを切り始めるとパタンとロールしてそのあと急に旋回力が発生する感じでした。
普通の車は「ぅん、グイーン」と曲がっていきますが、今回お借りしたロードスターは「パタン、ギューン!」でした。
サスペンションの初期の動きやすさとホイールベースの短さ、クイックなステアリングのレシオやセンター付近の遊びの少なさがそうさせるのかもしれません。
パタンとロールした後の急激な旋回力の立ち上がりで、緩やかなカーブでは常に曲がり過ぎてしまう状態となりいつも以上に修正舵が必要でした。
普通の車よりかなり繊細というか、「独特」な操作感です。
今まで試乗も含めて10台以上乗ったことはありますが、こんな操作感は初めてです。
お借りして8時間ほど運転しましたが最後まで緩いカーブは慣れませんでした。
独特な動き方ではありますがワインディングに持ち込めば体感的にギュンギュン曲がるコーナリングマシンです。
ロール姿勢が出来た後の急激な旋回力の立ち上がりで体感的に横Gが強く感じられ、速度が高くなくても凄くアグレッシブに走ってるように感じました。
非日常的な気分で楽しかったです。
KPCの効果は、あり・なしの比較をしなかったのでわかりませんでした。
今思えばスタビリティコントロール切ればKPCも切れたはずなので試せばよかったです。
また、2シーターで着座位置が後輪よりなので、「後ろ寄りの位置から長いフロントを振り回してる感じ」が少しあります。例えるならサーフボードやスノーボードのパウダーボードのような感じです。
横から見てみると自分が普段乗っているV60と比べて明らかに着座位置が後輪よりなのがわかります。
ホイールベースの短さの影響か、ステアリングを多めに切ると「自転車でハンドルを切り過ぎたときのような突っかかり感」を感じる事もありました。
今思うとタイヤからの情報が良く伝わってくるからこその感想かもです。
ステアフィール
うーん、電動パワステらしい「質感の低いゴムを捻るようなブニッとした感じ・ザラザラした感触」は少しありました。
このあたりについては自分はめちゃくちゃ神経質なので、普段から電動パワステに慣れてる人なら気にならないかもです。
電動パワステも成熟してきただろうという期待もあってこの質感は少し気になりました。
でも1週間ほど乗れば慣れると思います。
ステアリングインフォメーションはさすがスポーツカーです。
雑に全部伝わるわけではなく、タイヤから必要な情報がうまくフィルタリングされて伝わってくる感じがします。
そして操舵するとすごく密度が詰まっている感じがします。
組み上げ精度が高くて精密な印象です。
ちょっと記憶が薄くて自信がないですが981ケイマンに近いような気がしました。
アクセルとブレーキ
感動したのがアクセルのフィーリングで、踏込みに対して出力の出方がとても自然です。
よくありがちな踏み始めで出力を強めして力強さを演出する不自然な動きが一切なく、低速域から常用域まで思い通り速度をコントロールすることが出来ました。
こちらはハンドリングと違い、慣れる必要もなく乗り始めからとても扱いやすかったです。
ブレーキもストローク量ではなく踏力に応じて効くコントロール性重視の味付けでとても扱いやすかったです。
加速
高速道路の合流で5000rpmまで回してみましたが加速は十分です。
自分はサーキット経験がないので200馬力超えターボ車の全開加速で少し怖さを感じるのですが、ロードスターは自分にとってギリギリ不安感のない気持ちいい加速感でした。
まだ走行距離3000km程度の車両であり、レッドゾーンまでは回したくなかったので高回転域の伸びについては確認していません。
突き上げ感
突き上げ感はゼロではないですがほとんど気にならなかったです。市街地、山間部、高速道路と合計200kmほど走りましたが、その間に突き上げが気になったのは3回くらいです。スポーティな車としては十分快適な乗り心地だと思います。
外装
外装の見た目は個人的にはすごく好みです。初めてNDロードスターが発表された時「よくこのデザインでだしてくれた!」と感動したのを覚えています。
最近の車にありがちなイカつさやエグみがなく、気品を感じさせつつ新しさもあるとても素敵なデザインです。
前から見たときの齧歯類的な可愛さも良きです。
サイドから見たときのロングノーズ・ショートデッキなスタイルも美しい。
小さいけど寸詰まり感もないです。
個人的にはアンテナは無い方が好みかな。ちょっとだけラジコンぽく見えるような。
今回お借りした車は色もすごくカッコよくて、おしゃれな色味のシルバーボディとブルーの幌の組み合わせがとても素敵でした。
内装
内装も昔の鼓動デザイン出始めの頃と比較して質感が高くなったように感じました。ロードスターじゃないですが、2014年頃にアテンザを検討した時は内装の質感の低さで購入候補から外しました。
今回お借りしたNDロードスターの内装はデザインこそその時のアテンザに似ていますが、質感の低さは感じなかったです。(気のせいだったらごめんなさい)
唯一気になったのはサイドブレーキのリリースボタンで、ここは個人的にはプラスチックじゃなくてメッキにして欲しいところ。
んー、でもメッキより黒いほうが似合うかなぁ。
シートは腰回りのフィット感がすごく良くて、911やケイマンの標準シートみたいな感じでした。
肩周りのサポートがなくてもある程度の横Gに対してしっかり体を支えてくれます。
また、着座位置も低くてすごくスポーティな雰囲気を醸し出しています。
その副作用として靴をドアやサイドシルなどの内装に当てないようにするのはすごく大変です。
サイドシルに高さと幅もあるので靴を当てないようにするために太ももと腰の筋肉を最大限に使って乗り降りしました
内装に傷をつけないように維持するのは至難の技です。
2ドアということでドアの長さも長く、ドアを全開にできない状況では靴を当てずに乗り降りすること無理だと思われます。
そのあたりは2ドアスポーツカーの宿命ですね。
センタートンネルにもっこり張り出している部分があるので、足の大きい人はちょっと気になるかも。
自分は靴サイズ24.5cmですが、ほんの少し気になりました。これも慣れですね。
助手席にグローブボックスはありません。
その代わりに背もたれの間に収納があります。
開口は小さいけれど、奥行きがあるのでティッシュやサングラスは楽に入りそうです。
背もたれの後ろに荷物が置けないかと思ったけど、あんまり良さげではありませんでした。
座席を一番後ろに下げると潰れてしまいます。
オーナーさんも「座席の下に荷物が回り込むからあんまりよくないと思う」とおっしゃっていました。
面白かったのは取り外し可能なドリンクホルダー。
助手席横かセンターコンソール後方で付け替えることができました。
自分はこういう気配りと工夫が大好きです。
取り外しはちょっと固いので、外した勢いで内装を傷つけないように注意しなればいけません。
ドア上部のボディ同色塗装は傷がつかないか心配になるけどカッコ良いです。
鉄板剥き出しのような無骨さも感じられます。
トランクは深さもあって、デイリーユースには十分な容量があると感じました。
幌の開閉について
幌の開閉は大変だけど着座位置から行うことができました。
開動作
天井にあるレバーを引くと固定フックが下がります。
それだけで屋根を開けることができようになります。
ここで忘れずにレバーを戻す必要があります。
忘れると屋根の収納部分に干渉して傷つくことになると思われます。
動きも重くないので、ここまでは着座位置からでも楽に行うことができました。
最後に畳まれた屋根を収納部にカチンというまで押し込みます。
ここのラッチが硬く着座のままでは脇腹がツリそうになりました。
車外から押し込めば行えば楽にできました。
閉動作
閉じる動作は問題なく着座位置から行えます。
まずは背もたれの間にある解除レバーを引きます。
レバーを引くと屋根がラッチから解除され引き上げることができるようになります。
忘れずにレバーを起こして固定フックを下げておきます。忘れてしまうと内装を傷つけると思われます。
屋根を閉じる位置まで持っていったらレバーを戻します。
レバーを戻すときに固定フックがちゃんと引っかかることを確認します。
固定フックが引っ掛かれば、レバーを戻すときにテコの原理で屋根が完全に閉まります。
開閉動作に伴ってサイドウィンドウが若干下がるので、屋根を閉じたあとは自分で操作してサイドウィンドウを上げる必要があります。
車内の静粛性
クローズ状態での60km/hくらいでの静粛性には驚きました。
声を張らずに普通に会話ができると思います。
対して100km/h巡航ではそこそこうるさく、おそらく会話するには声を張る必要がある思われます。
スマホの騒音計アプリで騒音値を測ってみました。
測定はC特性の設定で「一般道で60km/h走行時」と「高速道路で100km/h走行時」の2パターンを測りました。
路面状況については一番よく見る感じの路面で、音の静かな黒いアスファルトやザラザラ感が強い路面ではないです。
比較として現在の自家用車の2014年式V60も測って見ました。
同一の道路で測定していないので参考程度です。
ちなみにV60は静粛性が高いほうの車だと思います。
驚くことに一般道60km/hではV60とほとんど騒音値が変わりませんでした!
高速道路ではV60と比較して15dBほど高い値を示しました。
この辺りはタイヤの違いもあるかもです。
V60は一応スポーツコンフォートと呼ばれるジャンルのタイヤを履いています。
・今回のNDロードスター:ADVAN Sport V105
・自分のV60:PROXES C1S(純正から履き替え)
総評
今回、次の車の検討ということで2021年式NDロードスターをお借りし、約8時間・200kmの道のりを運転してきました。
結論から言うと候補対象外にしようかなと思いました。
主な要因はステアリング切り始めのパタン・パタンとしたロールの動きとそれに伴う急な曲がり方、そして電動パワステのフィーリングです。
いずれも乗り慣れれば気にならなくなると思われますが、慣れて好きなる補償もないし、自分にとってオープンカーが特別に気持ちいいわけではないと気づけたので今回は対象外にしようと思いました。
自分の候補からは外しましたがNDロードスターからは間違いなく「狙ったコンセプトに沿って細部までこだわって緻密に仕上げた」質感が伝わってきます。
車のコンセプトと求めるものが一致するならば人生において素晴らしい1台になると思われます!
自分の現状維持本能が好みじゃないと感じさせているのかもしれないし、もしかしたら根本的に自分は「スポーツカーよりも普通の車のスポーティグレードのほうが好き」という可能性も考えさせられました。
お貸し頂いたオーナー様、本当にありがとうございました!